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「ケーキの切れない非行少年たち」宮口幸治著(新潮新書)を読んで

2019.09.07

著者は京都大学工学部を卒業し建設コンサルタント会社に勤務の後、神戸大学医学部を卒業。児童精神科医として精神科病院や医療少年院に勤務、現在、立命館大学産業社会部の教授である。
タイトルに惹かれて読んだのだがびっくりした。医療少年院で凶悪犯罪に手を染めた少年に面接をした時のこと。A4サイズの紙に丸い円を書いて「ここに丸いケーキがあります。3人で食べようとしたらどうやって切りますか。皆が平等になるように切ってください」という問題を出したそうである。
ベンツのマークのように三等分すればいいだけのことだが、その少年はまずケーキを半分に切って、その後は「うーん」と頭を抱えたそうである。再度挑戦させても不均等に4分割したりして出来ない。
宮口先生は「このような切り方は小学校低学年や知的障害を持った子供にもみられるが、問題なのは、このような切り方しかできないのが強盗、強姦、殺人事件など凶悪犯罪を起こしている中学生・高校生の非行少年だ、という事です。」と書いておられます。
「そういう少年たちに非行の反省や被害者の気持ちを考えさせる矯正教育を行ってもほとんど右から左に抜けていく。計算ができず、漢字も読めない、計画が立てられない、見通しをもてない、そもそも反省ができず、葛藤すら持てない。」
私には衝撃でした。少年院のことは全く知らないのですが、現実に宮口先生の指摘されるような事実があることを私は全く知りませんでした。
ではどうすればいいか。本の中で先生はいろいろ提言をされています。現在の日本の教育を考える中で是非読むべき本だと思います。

院長:阪中明人