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『心の深みへ「うつ社会」脱出のために』(新潮文庫)を読んで

2015.03.07

この本は亡くなった心理学者の河合隼雄さんとノンフィクション作家の柳田邦男さんの対談集である。
その中に柳田邦男さんが青森県の岩木山のふもとで「森のイスキア」という癒しの家を営んでいる佐藤初女さんを訪ねた話が出ていた。佐藤さんのことは私も何冊かの著書(「おむすびの祈り」他)を読み、死のうとしていた人が佐藤さんによって何人も救われている事実を知りなんと凄い人(ご高齢の優しそうな方です)だろうかと尊敬している。その佐藤さんを、これまた私が現代日本の最高の知性と尊敬している柳田さんが訪ねていた。
それだけでなく、なんとなんと河合隼雄さんも佐藤さんをわざわざ訪ねてそこに一泊したという。河合先生は「私のもっている知識とか技術で治るような人は、めったに来られません。つまり、私は治す方法をもっていない。それでも治るのは、その人が自分で治るんです。(中略)科学的にはだめだということで、普通の人がみんな投げてしまうことがあるでしょう。でも、そういう中で、おにぎり治るという可能性があったということは、ものすごく勇気づけられる。」と話されている。
その話の最後に柳田さんがこう言っている。
「世の人々は、カウンセリングを受けるというのは、なにか名案なり名回答、あるいは名助言をもらって、すっきりと心が洗われることであるというように誤解されているみたいですけれど、究極のところは、自分の気づきとか、あるいは不思議な体験とかがあったりして、それによって自分が人生の新しい道を歩み出すというようなことがあるのではないかと思うんです。」
素晴らしい本です。ご興味のある方は是非ご一読をお勧めします。