なないろ通信STAFF BLOG

「匂いと記憶」

2022.11.07

学生の時アメリカに滞在していた際、恋しくなる匂いが1つだけありました。それは、焼き魚の匂いでした。特に秋の夕方は寒空の下を歩いている時に、どこかから魚の焼ける匂いがしてこないものかと、日本が懐かしく、恋しくなったことを覚えています。日本では夕飯時道を歩いていると、どこかからサンマやアジの焼ける匂いがするのが日常で、その匂いがするとお腹が空くと同時に安心した気持ちになりました。

匂いと記憶には強い関連性があります。それを「プルースト効果」と呼んでいます。マルセル・プルーストという20世紀の作家が、『失われた時を求めて』という作品の中で、マドレーヌが焼けた匂いから幼少期を思い出すという場面を描いており、匂いは記憶や感情を蘇らせる効果があるということで、プルースト効果と名づけられました。私たちは経験したことすべての記憶を脳に留めておくことはできませんが、自身にとって特別な匂いを嗅ぐ度に、記憶が蘇るという力が人間には備わっているという不思議を感じています。